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庭の妖精たち
私の家の庭は、植物でいっぱいです。
幼い頃から自然が大好きな私は、ふと、この庭に住む妖精と、交信できるような気のすることがあります。
どこかで妖精が見ているようで、目を凝らしてみたり、呼びかけてみたりもします。
幼い頃の私にとって、ノームや妖精たちは、友達だったように思うのですが、はっきりとは憶えていません。
でも、数年前には何度か、確かに妖精を見ました。その時のことは、今でもよく憶えています。
夏の夜
四年前の八月、私が中学二年生の時のことです。蒸し暑い夜でした。
南の窓を開け放ち、妖精の刺繍をしていたところ、窓の外から、「とも・ちゃん」と小さな声がします。
母が妹を呼ぶ声かと思いましたが、なぜか自分が呼ばれたような気もするのです。
外を見ましたが、誰もいません。
変に思い、西側のベッドに座り直して、また刺繍をはじめました。
すると、東側に置いてあるスポーツバッグの前に、何やらもこもこと出てきて、すーっと人の形になっていくではありませんか。
栗色に金髪が混ざり、少しウェーブのかかった長い髪。
黒い瞳に、透けるような白い肌。そして、透明な羽根。
何とそれは、可愛らしい妖精だったのです。
私が見たからでしょうか、すぐに消えてしまいましたが、飛び立つ時のような格好をしていました。
群れをなして
五月十八日は、大変天気の良い日でした。窓から外を見ると、光に透けた葉でいっぱいの木に、沢山の妖精達が、わっと群れをなしていました。
その中で、一番目立っていたのは、角笛を吹く妖精です。
でも、その音は聞こえません。
うす黄色の簡単な服に、同じ色のとんがり帽をかぶり、服のすそと帽子のふちには、小さな白い点々が、ぼうっと見えます。
それはまるで、小さな白い花をちりばめた、ふち飾りのようでした。
大きさは大体、20cmぐらいだったでしょうか。
妖精達の背景や木の上の方には、透き通ったピンクのものが、ふわふわと動いています。
形がないようで、表現し難いのですが、これも妖精のようでした。
ほんの一瞬
同じ年の六月二十八日。
この日もよく晴れ上がり、窓を開けていました。
木戸の脇にあるポスト越しに、ちらっと表通りが見えた時、モンシロチョウのようなものがスーッと、一直線に飛びました。
でも、蝶にしては速くて、大きかったのです。
一瞬の事でしたが、私の目に焼きついたその姿は、人間と同じ体に、モンシロチョウの羽を持つ妖精でした。
小さな頭に、ふわふわしたタンポポの綿帽子のようなものをかぶり、服は着ていませんでした。
そして今……
近頃の私は、天気の良い日に、庭に出て過ごしたりしています。
天から降り注ぐプラーナと、陽の光を浴び、そして植物たちに囲まれ、とても幸せです。
目にははっきりと見ることができなくても、自然界の精たちを感じます。
時には、ぼうっと見えたりもします。
植物たちに話しかけると、何かがすーっと飛んで消えたり、風も無いのに葉が一枚だけ揺れたりするのを見ます。
きっと、妖精が遊んでいるのでしょう。
いつか、以前のように、妖精たちをはっきりと見ることができると信じています。
そして、話したりすることもできるでしょう。
それは確かに存在するのですから。