さて、現実には二つの地獄がある。
第一の地獄は、心理的地獄である。今、生きている時に感じる、地獄の苦しみである。
私達は心理の中にイメージを作る事が出来る。
それはマインドの働きによるものだ。
マインドは受動的なもので、私達が毎日見ている事、考えている事、聞いている事などを全て記憶する。
保存期間は半永久的だ。
例えばベートーベンの第九交響曲は、私達のマインドに素晴らしい振動を記録し、崇高な考えは、繊細な原料によるイメージを記録する。
ちょっと話しはそれるが、CMが利用しているのは、この原理である。
ある商品のイメージを毎日見て、買い物に行った時には無意識にそれに手が伸びる。
そしてまた、テレビで放映されているCMや新聞広告などを見ればわかるように、殆どの場合、人間が商品と共に出演している。
時計の宣伝をする時でも、ただ時計だけを置いたりはしない。
それだけでは人の目を惹きつける磁気がないからである。
宣伝する人間がいて、その人物が私達の視線を集める役割を果たしている。
その人物がもし肌を露出していれば、更に惹きつける力は強くなる。
性エネルギーは、全てのエネルギーの中で最も速く作用するからである。
ジュースを売るためにも、電気器具を売るためにも、或いは本を売るためでさえも、性的なイメージが多く使われるのは、その効果を利用しているわけだ。
多くの人々は、「テレビのゴールデンタイムに、これだけの回数の宣伝をするという事は、億単位のお金を使っているに違いない。
それが全部商品に跳ね返っているのだから、この商品の本当の値段は私達が支払うお金の何分の一くらいだろう。
パッケージの印刷代や紙代、人件費なんかも考えると、中身にかかったお金なんて、本当はわずかに過ぎない。」
などという事は考えもしない。
マインドに記録された情報に操られるように、行動しているからだ。
そうやって、莫大な量の情報がマインドに記録されていく。
心理はそれらの情報から、大きな影響を受ける。
そしてその心理の性格によって、私達の周囲に引寄せられるものが決まるのだ。
引寄せられるもの――すなわち環境である。
例えばポルノグラフィックな情報を好んで集めて、肉欲的な考えやイメージによって出来上がった心理は、周囲に性的なトラブルを引き寄せる。
また憎悪や妬みによって出来上がった心理は、やはり同じ波長の憎悪や妬みを外部に引き付ける。
これが心理的地獄である。