覚世眞経

 

帝君曰く、人生れて世に在りては、忠孝節義等の事を盡(つく)すを貴(とうと)ぶ。

方(まさ)に人の道に於いて愧(は)づることなくして、天地の間に立つべし。

若(も)し忠孝節義等の事を盡(つく)さずんば、身は世に在れども、その心は己(すで)に死せるなり。
これを生を偸(ぬす)むという。

凡そ人の心は即ち神にして神は即ち心なり。
心に愧(は)づることなければ、神に愧(は)づることになし。
若しこれ心を欺(あざむ)くは、即ちこれ神を欺くなり、

故に君子は三畏と四知とによりて、以てその独を慎む。
暗室欺くべしということ勿(なか)れ。屋漏(おくろう)にも愧(は)づべし。
一動一静も神明は監察したまう。

十目十手は理の必ず至る所なり。
況(いわん)や報応昭昭として毫髪をだも爽(たが)えざるをや。

淫は萬悪の主たり。考は百行の原(もと)たり。
ただ理に逆うことあれば、心に於いて愧(は)づる者あり。

利あるがために之を行うと謂(い)うことなかれ。
凡(おおよ)そ理に合することあれば、心に於(おい)て愧づる者なし。
利無きがために行はずと謂うことなかれ。
若し吾が教に負(そむ)かば、請う吾が刀を試みん。

 

天地を敬い、神明に礼し、祖先を奉じ、双親に考にし、王法を守り、師尊を重んじ、兄弟愛し、朋友に信あり、
宗族に睦(むつま)しくし、郷隣に和し、夫婦に別あり、子孫を教え、時に方便を行い、広く陰功を積み、
難を救い急を濟(すく)い、孤(みなしご)を恤(あわ)れみ貧を憐み、廟を創修し、経文を印造し、薬を捨し茶を施し、
殺を戒め生を放ち、橋を造り路を修め、寡(やもめ)を矜(あわれ)み困を抜き、粟(ぞく)を重んじ福を惜み、
難を排し粉を解き、貲(し)を捐(す)てて美を成し、訓を垂れて人に教え、冤讎を解釈し、斗秤(としょう)をば
公平にし、有徳の人に親しみ近づき、凶(あ)しき人には遠ざかり避け、悪を隠し善を揚げ、物を利し民を救い、
心を囘(めぐ)らして道に向い、過ちを改めて自ら新たにし、満腔仁慈にして邪念存せず、一切の善事は
信心に奉行せば、人は見ずとも、神は已に早く聞き、福を加え義を増し、子を添え孫を益(ま)し、
災は消え病は減じて、禍患は侵さず、人も物も、咸(みな)寧くして吉き星は照臨せん。

 

若し悪心を存して、善事を行わず、人の妻女を淫し、人の婚姻を破り、人の名節を壌り、人の技能を妬み、
人の財産を謀り、人を唆(そそのか)して争訟せしめ、人を損じて己を利し、家を肥(こや)し身を潤(うるお)し、
天を恨み地を怨み、雨を罵り風を呵(しか)り、聖を謗(そし)り賢を毀(そし)り、像を滅ぼし神を欺き、
牛犬宰(き)り殺し、字紙を穢溺(わいじょう)し、勢を恃みて善を辱め、富に倚(よ)りて貧を厭し、人の骨肉を離し、
人の兄弟を間し、正道を信ぜず、奸盗邪淫し、奢詐を好み尚(たっと)び、勤倹を重んぜず、護国を軽んじ棄て、
恩有るに報ぜず、心を瞞(まん)し己をくらくし、斗(ます)を大にし秤(はかり)を小(ちいさ)くし、邪教を假立して
愚人を引誘し、昇天を詭(いつわ)り説きて、物を斂(おさ)め淫を行い、明(めい)には瞞(まん)し暗には騙(へん)し、
横言し曲語し、白日に呪詛(じゅそ)し、地に背きて害を謀り、天理を存せず、人心に順(したが)わず、
報応を信ぜず、人を引きて悪を作(な)さしめ、片善をも修せずして、諸の悪事を行うときは、官詞、口舌(くぜつ)、
水火、盗賊、悪毒、瘟疫(うんえき)ありて、敗を生じ、蠢を産し、身を殺し、家を亡ぼし、男は盗み、女は淫し、
近報は身に在りて、遠報は子孫に及ぶべし。

 

神明の監察は毫髪も紊(みだ)れず。
善悪の両途は禍福の分かるるところなり。
善を行えば福報(むく)い、悪を作(な)せば禍臨む。
我この語を作す。願わくは人々奉行せよ。
言は浅近なれども、大に心身に益あらん。

吾が言を戯悔せば、首を斬られ形を分たれん。
能く持誦(じじゅ)するあらば、凶を消し慶を聚めん。
子を求むれば、子を得べく、寿を求むれば、寿を得べく、富貴功名皆よく成すこと有らん。

凡(おおよ)そ祈る所あらば、意のままにして獲られ、万禍は雪のごとく消えて、万祥は雲のごとく集まらん。

諸の此(かく)の如き福は、惟(ただ)善によりてのみ致すべし。
吾はもとなく私なく、ただ善人を佑(たす)くるのみ。

衆善奉行してその志を怠らしむる勿(なか)れ

 

 

 

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