小アルカナ その1

 

23:労働者】

二頭の雄牛が農夫が畑を耕すのに力を貸している。
開墾の始まりである。
エジプトは農耕に成功した国であった。
この古代の主な収穫は、亜麻と穀物であった。

一方各家庭では、家庭菜園で野菜や花、果樹やハーブを植えた。
ナイルの氾濫は、農作物の収穫を実に容易にした。
岩の多き山岳地帯であるギリシャは、人生の余暇の如くにそれを羨望して見つめた。
しかしながら、旱魃と氾濫は生活を妨げる脅威でもあった。

神殿では収穫の豊作と、帝国の安寧を祈った。


上段の鳥は、ヒエログリフのバー(魂)であり、下段のヒエログリフはカKaである。
上段の鳥のシンボルは、大アルカナの20で示されたものと同じであり、
Kaで示されるのは、人の働きをなす部分を示している。
Kaは人生の様々な局面での意味をカバーしている。
人が誕生を与え、子は父よりそのカKaを受け、またその子はカKaを、
オシリスの復活の時のホルスのようにして、父に与える事もできる。
広げた二本の腕で、他者に愛や悲しみの念を示すこともできる。

肉体を有するまでは、開墾が必要とされるのであり、バーとカKaは、常に彼と共にあるのである。

【正位置】

遺産・農業・家庭生活・努力によるビジネスの成功・真の田園生活・満ち足り・厳しくない冬・穏やかな春・霊的・肉体的に満たされた労働
・肉体労働者。


【逆位置】

重労働にして実り少なし・貧しさ・奴隷状態・旱魃・怠惰・石の積み重なる地を片付けるような退屈な仕事・労働者のストライキ。
芸術家の障害は、一度の大変な忍耐と、表面上無駄な努力に見える後に、解消する。

 


24番:織り手】

新たな王国の天井の高い部屋で、左胸をあらわにした女性がしゃがんでいる。
彼女は、使用するための布や覆いである、緑色の布を織り上げている。

上段には、(楕円形の)枠組みがあり、イシスがホルスに授乳している所を示している。
下段は、(大アルカナの)14 のカードで見たものとよく似たものが、
下エジプトの象徴であるパピルスの花の代わりに、蓮の花で表されている。

古代において織工は、第一の農業に続く、二番目に重要な産業であった。
羊毛や皮が禁止され、綿もまだエジプトの産業で亜麻が用いられた。

重厚な布は水夫によって使用され、軽いものは就寝、あるいは葬儀での覆いや包むものとなった。

多くの王は妃の住むハーレムを持ち、ハーレムの中では、大規模な織工が行われた。
エジプトのリネンは美しい模様や色のために野菜の染料が使われ、飾りが施された。


イシスは多くの面を持つ女神であり、彼女の夫であるオシリスが世界を通じて
平和な文明を広げるまでの間、織工を含む多くのわざを女性に教える。



【正位置】

伝統的な女性的な仕事・産業・ファッション、あるいはテキスタイルの仕事・クラフト・忍耐
・美しく実用的なものを創造するための秩序ある努力・母性における守護の面・私的な小さな事業の成功
・人生の異なる面を意義あるものして共に織り上げるための能力。

【逆位置】

・苛立ち・混乱・まとまりのない気晴らしゆえの家業の怠慢・平凡さより生じる不注意。


 

25番:航行者】

若き神ホールスが小舟の中に立っている。
蓮のメイスと舵を手に握っている。
この小舟には四脚の天蓋があり、水中にはアペプの蛇と、セトの同類である邪悪なワニがいる。

偉大なる太陽神ラーは、「億年の舟」なる太陽の帆かけ舟によって毎日東から昇る。
山々の間より昇った後は、天空を支え、二つの地平線の間を渡り、天空を横切る旅をする。

しばしば、この舟の乗員にはファラオ達や地上の神であるゲブとなった者や、
ラーの力の現れであるトートがいる。
船首でトートがラーの敵を交わそうとする時、ホールスは折々にこの舟の舵を守る。

敵の中の一つに、ヌーの原初の水の中に住まうアペプの蛇がいる。
アペプはこの舟の進行を妨げようとし、太陽の帆かけ舟を飲み込むアペプによって
しばしば月食が起こると言われる。

下のワニは、その顔の表現の怪しさにより、乗員をむさぼろうとしている。
ワニとなって現れたセトは一度、敵よりラーの守護を要求したが、
オシリスへの妬みが強まり、神々の愛より落とされた。
オシリスの子であるホールスによって打ち倒された後は、セトは天空を渡り、太陽の帆を負うものとなった。

下段の(蛇とワニの間の)カルトゥーシュは、「外国」を意味するものであり、
その上のホールスは、コブラのバンダナをつけている。


【正位置】

・雄々しき戦い・操縦者あるいは航行者・他者を守る者・克服されるか同種の所に投げ込まれるべき隠れたる敵
・家の安定性を脅かされ、外部に助けを求める
必要性・探査・冒険的旅・案内者。


【逆位置】

・状況がひっくり返る・壊滅的な旅・洪水もしくは溺れること・外部からの脅かしに対する過剰反応。

 


26番:天才】

司祭が、二つの蓮の小群の間の水の中にあるブロックの上に立って、礼拝の構えをしている。
彼の立つブロックの中にはアヌビスがおり、上段にはナイルの女神であるハピがいる。

ナイルが古代エジプトの畏るべき生命の源流となって以来、多くの儀式などがナイルに捧げられた。
上段のハピの姿は、ナイルの水の氾濫を表している。

司祭はまた、オシリスによってナイルに表された位相である、実りと豊かさをもたらす者である。
この描写の中で、ハピはパピルスを頭につけ、二つの瓶をたたえた台を手にしている。
その胸は、オシリスに吸わせることで彼をよみがえらせることを助ける、信念を表したものである。


アヌビスは死と砂漠の神であり、ハピの対極として存在する。
アヌビスは短剣を握り、真理の羽根をまとっている。
古代のエジプト人は、不毛な砂漠とナイルの豊かな水の乾いた岸に住んでいた。
彼らの仕事は、生命を与える神と、死を治める神の両方を称えることであった。


この若い司祭は、ナイルの豊かさの儀式を行っており、彼は常に砂漠の境にある生を侵す死を意識している。
それはまた緑の生い茂る地との境でもある。




【正位置】

・早いうちからの宗教的召し出し・神学校・実りをになう才能・人生におけるバランスのとれた見方・霊的進歩・将来的な栄枯盛衰
・益をもたらすために結果として起こり得る痛み多きレッスン・生と死の瞑想・二つのものの間にかけられた罠にはまった状況。


【逆位置】

・極端である一方、ムードに落ちる。・人生の深い意味の熟考の怠慢・大益のために金銭や個人的な物を失う(その逆もしかり)
・生きるか死ぬかの状況。

 


27番:不測】

弓を引く者が、不測の攻撃に対し、自らを守ろうとしている、
彼の頭上(上段)にはマアトの神がおり、下段には火を放射するさそりがいる。

古代エジプト人は、同時代の多くの民族より戦をしなかったが、
彼らの世界の秩序維持の為に行われなかった訳ではない。

戦の中の慣例の一つは、宣戦布告の義務である。
「おとり」を考慮して、夜間の急襲をする事であった。
このカードの戦士は、エジプトの軍隊の暗号を知らざる、他民族から身を守っている。


マアトは真理の神であり、世界秩序の神である。
この女神は文明の礎と自然の力を熟考する。
火を放射するさそりは、矢の先に死を結び付けている。

【正位置】
・戦士のような人物・軍人・名誉・苦痛をもたらす予告・状況の正確な分析・不測の攻撃や事態。


【逆位置】
・罠・不名誉・予告なき攻撃・誰をも駆り立てる突然の隠れた悪意。

 


【カード28:不確かさ】

下界の星の下で、二人の男が立っている。
一方は笏を手にし、一方の者は両手を崇拝の形にしている。
ホールスの目は右にあり、彼らの下(下段)にはイシスの結び目がある。

この下界は、未分化であり、未だよみがえらざる死者の不確かな場所である。
このカードの二人の人物は、互いの方向から、互いに向かい合っている。
彼らは異なる役割をよく考えるかもしれないが、
彼自身、神に対する敬意を払わねばならなかった。

死後の魂の旅と平行する、下界を通過する太陽の夜の旅。

ホールスの新たなる光への希望は、その目によって示される真昼の太陽の光である。


イシスの結び目は、葬儀において用いられた。
これは、「イシスの血」と、イシスの力、イシスの言霊の力をかたどるものであった。
「水に浸されたアンカムの花は、死者の首につけられた。
これは、この下界の全てのところに近接することが出来るような霊の守護となるものであり、
「一方の天国への通行」にその死者を導き、もう一方を地に向かわせるものとなった。」(エジプト魔術)



【正位置
・不確かさ・ためらい・曖昧さ・行動を起こすに明らかならざる状況・正誤なし・二元性・自己の異なる部分間の闘い
・金銭的な状況を扱う事に対する不確実性・なされるべき二つのルマンチックな関心事の間での決定・両極性。

【逆位置】
・反対の結合・多大なる内的苦しみの後の決定・人生における役割を固め、保守的な態度に至る。
・能力によって、両極性を操る力を得る。

 


【29番:家庭生活】

百姓が、角をもってガゼルを優しく導いている。
上段にはスカラベがあり、下段には心臓のシンボルがある。

ガゼルはトートとオシリスに奉献されたもので、数多くの禁忌によって保護されていた。
ナイルの水位が上昇した時には、氾濫から砂漠の中に逃れる所を求めるために、彼らの牧場にしている
土手の敷地から逃がす事によって明らかにされた。

初期の頃は、ファラオ(王)のみが滅びから不死の命に至ることができると考えられていた。
時代を経るにつれ、下級の者から上流階級の者まで全てのその望みを抱く者が
永遠の生命を得られるようになった。

この百姓は、スカラベの援助の下に歩いている。
なぜなら砂漠の砂から現れたからであり、スカラベは日の出と再誕のシンボルとも考えられている。
これは一日の中でも最も気温が高い時に飛ぶので、そうして天頂の太陽の力に結びつけられた。

このスカラベは、通常は後ろ足によって糞球を転がす。
この糞球はまた、スカラベの卵をも含んでいる。
それが埋められる時に、卵がかえる。
エジプト人たちにスカラベがかえるのは、人間の肉体から永遠の生命の火花が、
糞球に映し出されている事からであった。
このスカラベはまた、時に太陽の円盤を転がしているようにも示され、
下界より現れ、先方より全生命が来たる事に、糞球が平行しているのであった。


スカラベは恐らく、墓所から発見された数百のアミュレットの中で、これまで最も多く見つかったものだろう。
それは心臓部につけられており、「死者の書」の第三十章でもしばしば、スカラベの背が刻み込まれている。
その章では、その死者の心臓に当てて、(死後の)審判の間、その者と共に立つ心臓に尋ね、
また亀裂がその者とその者の心臓の間に入らないという望みを表したのである。

【正位置】
・つつましき献身・家での満ちたり・アミュレット・ありふれた状況を越える抱負・控えめな野心
・動物や家畜の世話・殆ど放棄された一つの計画からの驚くべき結果


【逆位置】

・霊的盲目の中での俗物根性・計画の放棄・エリート意識・取るに足らない懸念の怠慢の中での、全てのレベルを落とす結果。


30番:交換】

二人の男が祭壇に行く道で、神への捧げ物を運んでいる。
一人の男は二羽の生きている鴨であり、もう一方の男は熟した果実の大皿である。
上段のヒエログリフの「サ」は、アミュレットの意である。

祭壇はまたしばしば、死者にもたらす食料を捧げるために使われた。
幾つかの祭壇の表面は、食物の絵の彫刻が施され、
もし生者が、食べ物を捧げる彼らの務めを怠ったとしても、来世にある死者は滋養を得ることができる。

アヒルは動物の一つであり、生贄とされ、
死者の口を開くための儀式に捧げられた。
この葬儀は死者が食物をとることを可能にするものであり、死者の魂に生命の息吹を吹き込むのを
許すものとみなされていた。

【正位置】

・物々交換・交換・豊かな条件・好ましい契約
・祖先と過ぎ去った時代に向けての敬い
・沢山の飲食物・霊的な集まりに自らを捧げる


【逆位置】

・だまし取る・飢え・伝統に対する軽蔑
・商業飢えの恥辱・ビジネスや社会的接触の貪欲な反発・年長者の怠慢。



 

31番:障害】

婦人が茶目っ気のある小悪魔たちと戦っている。
黒皮の棒で一方に彼女は棒を振り回している間、もう一方は彼女のエプロンにこっそりと手を伸ばしている。
上段には、自らのなした捧げ物がある。

古代エジプトでは、悪魔は様々な姿をとって来て、いつくかは恐ろしいものであった。
その多くは下界、死者がそれより保護されたという等しく恐ろしい見張りと、今なお統治する原初の神々のます、
宇宙の彼岸の一端に住まうと信じられた。

いくつかの悪魔は病をもたらすと信じられ、セクメトの神にいい加減な礼拝をするような者たちに、
それらの悪魔を負わせたという。
エジプト暦の終わり(6月頃)に引き起こされた病気の流行は、セクメトの懲罰であると考えられていた。

他の悪魔からは、体が溺れること、夢遊病、夢魔、てんかんなどが来るとされた。
彼らはまた、ゆりかごから赤子を取り、茶目っ気によって生者に責め苦を与えるとされた。
婦人に対し、悪魔によって運ばれてきた水草が差し出されている。
これは悪魔たちが下界のものであるからだ。

下段では、太陽が月に影をおとされている。


【正位置】

・反抗的な子供たち・統御できないマインド
・混乱を引き起こす心配・多くの注意を要する多すぎる問題
・コントロールを失う・幸福を覆うささいな心配
・病気


【逆位置】

・助け・突然明らかになる・決断力と行動
・障害を取り払う・取るに足らない苛立ち。

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