皇道は天象のまにまに則りとるを釋す

 

天晴れ國を治むるにも身を整ふにも。
徒に博愛とかいふめる一點の標準より立て來ぬる集合體の國ネの、
其の實は個人主義にて長く一定せざるは論もなきことなり。

そも愛は天性のものにはあれど、其の感情洞達せされば弊は免かれかたし、
そも愛を永遠に維持し全せむには。必すしも同時に禮節の伴はざる可らざるなり。

禮節とは日足を左とし美伎里を右とし、相易り變ずる事なき謂にして。
禮と和と相應用して始めて萬の事の調ふべき理りなり。
只に慈愛勇直のみにては。末は柔弱に流れざれ婆。狂暴に陥るなり。

かれ革命の國々を視よ。利己主義幸福をのみ本とするなるより。
いか程法度を建るも建ると共に不便のいて來て底止すへからず。

彼耶蘇の徒の救之に博愛主義を以てすなるも。禮敬の薄弱なるより。
また一方に傾き。異外の結果を見る事史乘の傳ふる處のごとし。
皇國は諾册二柱大神の開闢の始を立て給ひ、
既く遠長に後裔を達觀し賜ふ無上の國にして本かしは本堅き故よしは。
天津神授の十全大同の御稜威を備ひし。
天瓊矛と國中の御柱即ち突立て給ひ。相愛し相睦み賜ふと同時に。
左右男女のほどを定め。
夫先唱へ婦次に和ふ禮節を言擧け守り給ひ、次て神々を生産し給ふにつれては。
やがてまた其緒を序てゝ。
産の神々の御上より遠く後を見そなはし相競ひ相奪ふの悪き習を閉し塞き。
神人調和永安に住ましめむと。
至愛の極み皇極の標準を立ざるへからずと。
於是哉幽現一致造化の本位を知食す。皇大御神の生産坐す事と成にたり。
かくて宇宙の間に一條の倫理愛敬兩全なる方向も確と定り。
天地中の大權は悉く 皇大御神の主催し給ふ事とは成りにけり。
故に天神同魂なる天授の瓊矛とて。終りに 皇大御神を天位に贈り奉れるは。
終始一貫なる惟神の大手振の幽理と知られていて。いともいとも悦し。

論語てふ書に。
知及之。仁不能 守之。雖得之必失之。知及之仁能守之。
不莊以@之。則民不敬。知及之仁能守之。莊以@之。動之不以禮末善とありて。
動くに禮を主とする金言は神人の標準なり。拳々服膺せさるべからす。
是れ所謂天地定位。而君臣分定抑皇國を除くの外。萬國は一に天帝をのみ大主宰と仰くを。
皇國は皇大御神を無二の至奠宇宙の大主宰と仰く。
其神理の存在するところ實に此にあるなり。
されば一大問題として須らく公平の眼を以て論定すべきなり。

かくて今日の吾國民たる者は。疾く此問題の理由を辨知せざるべからず。
紫髯濠癨Zの常に睨視しするより、他日或は本末の抗論に及ふ事あらむに。
正確なる神理を審明せすして曖昧に歸したらむには。
彼の外教者の説に追い立てられて後悔ゆとも及ばざる處あらむ。

苟くも我大日本の神コ皇威を宇内に發揚せむと欲する烈士は。
豫め彼説の似て非なる理由を會得しをき。
この岩垣を堅固に突立て。神律の澄繩を擴張せすんばあるべからず。
予茲に聊か蕪言を吐露する者は。其所感に於いて止事を得さればなり。
然れど若し又予が説の正當ならざる所あらば。
聊かも假借せず直に其を欠補ひ。以て皇國の爲に裨益あらむ事。
素より比呂伎が希望する處にして喜敷ものにこそ。

偖 皇大御神の天地の大主宰に坐す眞理を説くに先立ちて。其食知す處の位地より云はざるを得ず。
古史に所謂高天原とあるを。先哲の太陽なりといはれしは其の當を得たり。太陽薫陶の大なる事は。
荒木田末壽大人は此の御光あるによりて。春は霞とのほり秋は霧とふりて。
山常しへに川淀まずと称へつるもげに然る事にて。
誰も見放け奉るが如く六合を照徹して。
水火風雨燥濕悉く御コに化成する光温良能の指揮を仰かざるは無く。
又其照育を蒙らざる者無きを知らば。
化工の元も太陽より承くるの恩ョ原因を推知すべくなむ。

故に宇宙に具備する所の物力は。光と熱との二者の?鑰に掛りて生活せざるはなし。
然して其の氣噴(イフキ)出現する事今に一轍なるは。實に靈妙と云ふべきものなり。

光は無機物を變して有機物分子を生成せしめ。
之を以て人畜保生の大本たる草木を養生し。
熱は専ら無機物を化成し。穢れを拂ひてCに皈する奇功を醸成す。

また氣候を變生し水氣を蒸騰し大氣流動し雲を起し雨を降らすも。
素は炎熱の然らしむるものにして。皆太陽の左右する處ならざるは無し。
光と熱とは共に其源を太陽より發す。而して太陽は古今多少の増減ある事なし。
若し天に太陽なかりせば、乾坤夫れ止むに至らむか。日大御神の太陽中に高御位知食し。
宇宙の生活を主宰し給ふ事なかりせば。萬の事物皆滅亡すべき歟。視よ日の中天に位して其處を移さず。
月星地球等羅列して、天津日を御柱となしつゝ順環運行を爲すものなるを。斯くて宇宙の間に。
といふべき國なれば。實に此の眞理は宇宙の標準といふべく。
皇國の本首も亦茲に基きて定めざるべからず。然るに異邦は造物主のみを祭りて、
其の教の本を殊にする事を辨明分析せず、猥りに對考して宗教的思想に不動位の所をさして經と云ひ、縱回轉するを緯と云ふ。
但し茲に於て不動と見放くるが如き北極星を始め。
地軸の如く晝夜其の線維を同うするが如きも。
今や更に然らざる理由ある事を知るべき也。

然れば北極南極を地球上下の標目と定め云ふも。彼の二極たるや地球と一列して。
日輪を巡廻するなるべし。

是れまで經星と見認るも實は五星等に對する義にして、諸星も皆日輪を經とし。
一致一列惣動して日輪を巡るものにて、日輪は宇宙の中間に自轉す。

其の旋化の勢に引かれて地球は自轉しなから。諸星と列を整理して。
大巡りに日輪を廻り、自ら一軌道を成し。
順行不定に似て又凖則ある也。
此等の星の外に彗星と言ふあり。
其の通ひ長く楕圓に回轉するが如きは。
蓋し五星運行の威力に推され。其勢に厭せられて。
長き楕圓形回轉を成す物なるも知るへからず。

斯の如き作用に依りて考ふれば。天地間福善禍害の所生。
運用の神理幽冥の神判恐るべし。
神典に武甕槌の神。星の神香々背尾を誅すとあるも。
善悪吉凶の因縁する所。皆神理に因らざるはなしと雖も。
是亦非凡の眼を具へずば知る事能はざるなり。

今諸星を概して。日の游星といふも敢て誣言に非ざるべし。
故に唯自動と公動と衞動と游動との差別こそあれ。天地間動かざる星一も有る事なし。
今人經星と認むる地球兩極。其他同し類の經星と認る星も。
皆大君主と仰く日輪を大廻して之に臣事するにあり。
然れば四時の氣候消長する理を推測する時は。
是までの經緯説は立つべからず。况して衞游星の如きものあるをや。
宇宙一言を以て之を蔽ふ時は。唯日輪は經なり。星羅萬象は皆緯なり。
唯緯星中に屬する星を游星といふのみ。北辰の其處に居て衆星之に拱すといへるが如く。
太陽は自から其所に居て天の中心に立ち、是までの經緯游衞等の星之に拱すと云ふより。
他に推歩の理はなかるべし。彼の理學日耳曼の博士と聞こえたる。

カントの説に曰く。晴夜空を望めば、滿天星辰羅列せる。
此等星辰は多く我が太陽の如く。全體熔解せる圓球にして。
光と熱とを發して以て其屬星に興る所鑒察し得るに過ぎずと雖とも。深く推究する時は。
諸恒星皆同一の元素より成立たる者なる事明かにして。
各星各異の元素より成れる者にあらす。
且つ其の形状及ひ位置に就きて考ふる時は。
諸星其始めは一氣體なりしが。後分離して巨萬の恒星となり云々。此の恒星の各々分離して。
其の屬星を生せり。即ち我太陽系諸星の如き是なりと。湯本氏の日本開闢説とて。
日本教育雑誌に掲げられたるは。
寔に近來洋醉勝つなる諸氏に獨り抜でていと其の志のめてたくなむ。模擬する者は何ぞや。

比呂伎謹て考ふるにそも我神典に。
ククモりて含芽とおほとかに説たるやふにあれど。
さすがは神業神傳にして不洩そいと蘊奥なれ。其天地未開前には。
太陽も恒星も五星海王天王地球も。一塊渾體たるを。
ククモリの四音一辭に説き明されたる傳へにして。
彼の天蓋地平須彌四洲六日萬象を造り終たる等の作説にあらす。
百世實理を俟ちて初めて顯る。
いともいとも高尚なる底深き神理なれ。
さるを中昔儒佛にとりことせられ。
近時又もや耶蘇説にあざむかれむとせし折にしも。
天然と顯れ來ぬる皇典の神理は。理學輸入し來るに伴れて。
彌々揩キ光輝を發揮するこそ豈に人事にはあらざるものなれ。

さて諸星地球の太陽より一たひ分離しては。
其星質地質によりて遠近距離の位置ある解釋につき、近來小地質冊子に曰く。

我太陽系を見るに。太陽は中心にありて爛々たる光を放ち。金星火星地球水星等。其周圍に廻轉す。
之等の諸遊星を見るに。皆同一平面中にありて。同一方向の廻轉を有し。又皆惰圓體をなし。
恰も柔き土塊を取り。之に軸を貫きて絶へす回轉して得たるが如き形體を有す。

今尚我地球を見るに。火山温泉等の如き。地下には大熱を有するの兆候を示す者あり。
陸地山嶽等の如く岩石熔塊の冷却して、凝結したるの状を示す者あり。

之等の諸現象は。霞雲説を創意するの最大根據を與へたる者なり。
該説に曰く。我太陽系は其初め一の氣體塊にして。絶えす廻轉し冷却するに從ひ流體となり、
又半固學となり。其際一部分裂して天王星となり。又海王星となり。順次諸遊星を放出し。
遂に今日八遊星を生し。之等は其小なるがために放冷すること早く。
又殆と光を放たす。獨り太陽は其大なるがために放冷すること遅く、今日尚ほ光輝を有せり。

斯く地球は其初め氣體にして。漸次冷却し遂に今日の有様に至りしを知る可し。之を霞雲星説の概要とす。
此説元と天文學に屬し其理論深奥且廣衍にして。初學は俄かに之を信じ難し、然れとも。
カント氏等の創意己來。諸學者尚深く之を研究し。
愈々此説をして確實ならしめたりと論したるも、比呂伎考ふるに。
此説は皇典と大同小異にして。寔は我神典の正明なるを証明するにぞあなる。
如何となれば。神典にC明(スミアキラ)かなるはタナヒキて天となりと有る。
棚ひくとなひくの字義は聊か意義を異にせり。
ダは多き象。ナは虚體空明物に付添象。ヒは廣大無數なる星象。
キは牙音にして其義を之のタナヒキの四音一詞に重々多々なる星象を説きたる神理言魂は
恒星天土星天と夫れぞれ高底棚の如き遠近有りつる森羅萬象の天體を包羅概説したるこそ著けれ。
又重く濁れるはつづきて地と成るとは。元来地球は太陽と一塊(ククモリ)なるも。
太陽の廻轉する氣勢に粉韲せられ。
切れ離れたるもツ音の連續したる象。
またチ音の圓れたる締りちゞみぬる圓形凝結を為すにて。

ツチ二音の一詞となれるも。
素は太陽と一塊なりしか離て一球隋圓形と成る言魂にして、
神典は億萬の創に既に擧けつるひぬるにて寔は人意の表に出でゝ。更に人作に非ずと云ふべき徴なり。
太陽は今に嚴然と宇宙の最中に位をしめ、萬星球を旋廻する根幹と成り、
開闔集散物と理とを悉く神性所謂キザシに伴なはしめ、
自からなる萬斯一定の矩準も立ち。欠けず崩れず神業も本末あり。
易簡にして洩さぬぞ實に我神典の神典たる所。神統の祖國たる理由なる。
あはれ甘し國なるかも。 (小異なりとは元来諸星地球は太陽と混同一物になるも。
切れ離るゝの際Cく輕き物と重く濁れる物とある差めは。
數の免れさる理象より分裂する位置は。蓋し諸星中の中程に位せりと知りぬ。
地球より重く太陽の距離彌々遠き星は。地球より一層重きと知られたり。
輕重は游氣体中と雖とも。輕重ありて多少の遅速遠近上下位置を免れされは論なし。
其他太陽は其大なるがために放冷すること遅く。今日尚ほ光輝を有せり抔といふ説は。
心に任せたる推測にして信を置がたし。事長ければ此には畧きつ。)

斯れば言魂の大源音理現象より論する時は
即ち太陽は宇宙間眞中に君位を定めて六合に照徹し。諸星は日を廻りて廻轉し。
四時の序を成す事。群臣各分職して施政を補佐するに異らず、
夫然り其然る所以のものは太陽中に斯く尊き大主宰の神に座して。
その統御運化の勢力に引るゝに依りてなりけり。 
(日大御神の太陽中に主宰しましまして萬物萬星の標本と仰き。
其の慈祥を蒙る自然の神象とを了知し。然して其の高御位を定め給ふ。
天象人理一脉たるを覺りたらば。皇國は造化主を不祭して。
皇大御神を無上の至尊と齋き祭るへき眞理を不見れば造化主が主として本と。
取り構ひ給ふ太陽中に。御位を定め給ふにて。皇大御神は宇宙の大主宰に坐々し。
幽現兼備統御ます神訣を知らしめむと。大本たる天象をかくくだくだしくも述るになむ。)

地球は神典に大空無根懸久良氣成漂流とときツチと名つくる言魂にて、
皇國は萬邦に先達ちて地球圓體の説の嚆矢たり。
是れ原より神の御傳のまゝなるが故にして、外國の如き星學の推測などより。
見出でたるにはあらさるなり。
(亦言靈の神理によれば。是にも圓体地理の音性形質の備はり。
千音の妙用に依りても覺らるゝ事あり。そは別に説かんとす。)

かゝる尊き神傳を恬として觀る者も無かりしは。
我國は東首に在りて性質は直やかに大らかにして。自己を忙れて進化する癖あるか故に。
善きも悪きも耳目に新觸する事とし云へば珍らしげに移り。
輕躁にして本を忘るゝの傾向あるを免れざれば、須彌の説による者あり。慥むるに添たる活詞なり。

或は天葢地平を信ずる者ありて。神典國史による事なく。年序を經過せしに。
彼の普國の天文學士コペルニカスと云ふ者ありて、初めて地球圓體の説を發明したれども。
當時耶蘇教徒は異端邪説と成して。之に嚴刑酷罰を加へむと成したりしが。
今日に至りては彼の須彌説や耶蘇徒の説は一笑に附するまでとなりぬ。
若しコペルニカスをして我が神典を當時に知らしめなば、其の喜悦して手足の踏み舞を知すあらむ。
斯く新思想の一回世に顯るるに及ひて。撞突阻障其排撃を成すも到底神理に支配せられざるを得す。
いで其証徴を擧けむには。神典中に日の御國は此の地球に異る事なく天香語山。天之安河の類。
亦佐々良之小野及家屋等も在り。
山川原野樹木禽獣及百般の事物あり。一として備はらざるものなし。
かゝれば。日球中に。大主宰の神の座さで得あらぬ理ならずや。
斯の如き神傳は外國などには夢にも見る事能はざるなり。天晴れ天上の生動物のみかは。
其の祭事神式よりい倫孝敬秩序を受繼き給ひて、代々の天皇の天津日を尊敬し給ふ大御手振は申すも更なり。
前にも述たるが神武天皇東征の條に吾は日の御子にして日に向ひて戰ふは利あらずと詔へる大御心。
若日下部王の亦雄畧天皇に夫婦は人倫の大本たれは。初より之を正しくせざるべからずとて。
背日して妻問給へるを諌め。
天皇にも深く容れ坐せる由など。いずれも日の方を敬ひ給ふ。
大御心は一にして。其本深き神理あればなり。
(然るを唯に戰畧の事ならむといひ。亦彼の宮敷ます所を撰び給ふにも。
朝日夕日直刺す地を卜してものせらるゝ神式を。或は旱燥の地を卜する為ならむと見成すものは。
例の理想的推思に傾くのくせになむ。)

然れば日輪を一の物質とのみ見なして敬せざるは。神理に暗き異邦人の不幸なり。
(異邦人は然もあるべきも。皇國の學者すら今は彼の説に染みて。
日に向ふ事を等閑にのみ見成す輩などには。伊弉諾尊の脩禊のをり。
殊更に日向の小戸に御心を立花に薫せ給ふ神理。亦猿田彦大神の皇孫を日向の果てに導き給ふ。
皇國無上の神秘の説。萬古に渉り後世を觀通し給ふ神則は。夢にも知り得べき事にあらずなむ。)

嗚呼彼の大聖と稱する堯舜すら神人の際を語るを惱む。
然るを況して凡庸の徒が哲學究理學上より神妙の理を推究せむとするも、及ぶべけむや。
是皇國の如き神授の大典なきが故にて、物有て始めて則を取る異邦の風習こそ憐れむべき淺薄のものなれ。
是より御光の御盛コを釋むに。皇大御神の御稜威の漏れ出る。太陽の光線をヒカリと奉稱る。
一音單義中にいとこよなき綾に靈しき意のくゝまる言魂の傳はなかなかに會得し難けれど。
まづ一渉り五十連音の序位により。 天地自らなる性格の備りぬる、そが進退延約生動の荒ましを言ひて。
言魂の効用いみじき事を明かすべし。夫れ風に觸れは波に聲あり。
伐木(キコレ)は谷彦(コダマノ)響きあり。早苗田の蛙。花園の鶯は更にも言ず。
玉や金やの音なひ觸て鏘々(モユラモユラ)然と鳴る。

是れはた天地の眞理にして何かは神律に契らざるべき
(某の名は忘れたれど。金氣の精髄は笛の形象なりと聞きぬるは如何にそや。かゝる)眞理は知る人そ知らむ。)
さればとて。阿行の如きは諸音の親なるがゆゑに。
事長くしてたやすく釋き明すべからねば今此を暫く置き。
次なる。加行附て先つ試み論らむとす。
ここに加行の上より降る音韻は、カンキンクンケンコンと次第に重かるが。是に反(ソム)けて下より昇る音は。
けさやかに轉て輕きを覺ふ。こを性智の發揮進運に準へて釋きなば。
いと底なるコ音の單義は心の象なり。
心は隠れて空中の火の如く、應映(ウツリハエ)ては深淵の水の如し。
強く牙喉の活機に顯れ出る韻にして、須臾の程も靜けき事なく有るか有らぬかそれかとしもなく。
出入無時の感格を來す。奇しき物にこそあれ。

さて。コ音は於音の底ひ深く太しく強き母の質を蔕び。
(胸中にまれ殿頭にまれ。如何にも身体の奥まりたる方にひそみ位すと言ふが如く。
音圖の最も下にありてその眞象の神字形に現るゝに眼を注きなば、
出沒不滅強固無形の靈物なるを知るべし。此に或説にイキシチニヒミーリヰを。第三位に置き易て父位と成す。
約り意は同性なれば。今は試にウクスツヌフムユルウに付いて。性格を立るになむ。)
久音の靈しく動きながら隠れて見難き。父の性を繼き生立てるものから。
心の象とは自ら知られたり。

(心は和魂の一物なるが故に。コと單音に呼ひ成すべきを。
ココとしも連ね唱ふるゆゑは。心は和魂 荒魂 幸魂 奇魂 の和合したる組立上の名稱なるが謂なり。
性情と連ね魂魄と会して。徒に心と呼ふも同じければなり)

それに良行のからみ締まりたる口音を添へたるが。
心の言の葉の組立にて。正しく惟神なる言魂とはなりにけり。
因に言むに。神典に有一物其状如葦芽とある一物はコとしも可讀付そちなるを。
是れはた造化大神の御魂なるがゆゑに。
コ音の進昇純粋(イススミマジリナキ)中正の音はキ音なればキ音に移しキセシ。
キザシと神代より口授し來ぬる神習は今更に驚きて、奇しく尊くなむ。

(カヒの約りもキと成るに心を着べし。亦一物のモノの二音の通ひて。コの一音本性を顯したるもあやし。
神音は縦横の源に合ふ五十連音靈機なる。豈絶奇驚歎に堪ふべけむや。
神國の言語は實物に付き意義を示す風なれば。誠生物と不言して物の物を生するは。
理實の上には識り易きによりて。
一物と言ひたる神代よりの習せなり。中庸てふ書に誠者物之終始。
不誠無物。亦天地之道可一言而盡也。其為物不貳則其生物不測と。
物と誠と互に文にするなり。
荘子てふ書にも生物之以息相吹也とあるは造化主の性情純一無混の靈を物とも指すなるべし。)

偖一物とは心の意義なる徴(シル)しは。大物主神は大國御魂神と御同體なる和魂に坐せば。
物と魂と變る事なきは明晰なるが如し。
(造化大御神の純一剛健に坐すより。サカと奉稱。其盛コ無始よりはカヒと稱ひ萬物化醇するより
キザシと稱る言魂の働き。コ音を妙用に使用する。殊に綾しき神國の習せにや。)

 

 

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