鴻濛字典

鴻濛字典『太古字及幽界字』は其の巻末に水位先生自ら所記された如く龍鳳文並びに神代古文字を集記されたものであるが、厳密な意味では字典の形態に程遠い。

それは此の書が書斎に成ったものではなく、門人多田家(阿波国小松島)に仮泊中同人の請に応じて一気呵成に執筆されたもので、素より旅中のことゝて座右資料とてはなく、たゞ思付くまゝに書留められたものであることは配字の無造作ぶりからも看取されるが、流石呵成の裡にも先生の薀蓄の程がしのばれる。

先づ初章はアイウエオ五十音の夫々の音に就いて 一音毎に二十字内外の異なった神代字を誌され、次に漢字に相当する神代古文字1,069字、次に大字にて幽界字42字を記されてをり、一見、身は現世にありながら垣間見る異次元文明の威圧感に眩暈をすら覚ゆる思ひがある。

此の 鴻濛字典は多田氏嗣子来高の砌之を将来せられ、爾来神仙道本部の龍窟深く秘蔵さ れ嘗て之を他に示したることはなかったが、徒に荏苒好機をのみ待ちあぐみて其機を逸し 先師の不世出の業績を無に帰する如きことありてはと意を決して之を公表することと致した次第である。

地上文字文明淵源五千年、其神界に亘る古文字に及んだのは蓋し本書を以て嚆矢とするところで洵に水位先生に非ずんば、到底世に出づ可らざりし霊典である。
    
昭和六十年 五月
           
後学  清水宗徳識

つづく

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