自修鎮魂法入門

  自修鎭魂法要訣(大要案)

この一篇は、故宮中式部職掌典宮地嚴夫 翁の遺稿で、翁が晩年の筆述に係わるものである。
翁の薀蓄は傾けて本朝神仙記傳に集成されてあるが、本編は道學家としての立場からの鎭魂の一法を述べられた 草案の一部で、
本来この種のものを公開することは故翁の素懐に悖るものではあるまいかと考へられるが、既に記傳の刊行に付随して世に出されたものでは
あり、一部読者層の参考に資する為め、他山の石として登載することにした。
極めて仙道的色彩の濃厚なものであるが、ただ本篇を以て遽 かに翁の眞骨頂を評価價せんとするが如き態度は愼まるべきであると思ふ。

昭和二十一年 三月
南嶽識

 

毎日午前二時後、五時前を以て、鎮魂法を行う。下手の順序、左の如し。

先(まず)、東或いは、南に向って安坐す。

両の拇指を内にし、四指にて握固し、両手を左右の腰腹間に柱(た)つ。

次に濁気を吐くこと三回。

次に、歯を叩くこと左にて十二、右にて十二、中にて十二、合せて三十六回。

次に、気を引きて、息を閉ず。

気を引きて、息を閉ずるは、最ももれ、修錬の要妙なり。
先ず目を閉じ、妄念を払い、雑慮を浄め、心源をして、湛然として諸念を起らざらしめ、出入の息、自ら調和したるを覚ゆれば、即ち静かに、鼻より気を引きて、これを閉ず。

次に、心を想いて炎火の如くならしめ、光明洞徹して、下腹、即ち臍下丹田の内に入らしむ。
腹満ち、気極まれば、徐(おもむ)ろに、口より気を出す。
その気出入の音の、耳に聞ゆること無からしむるを要す。
かくすること三回。

次に、出入の息調和するを俟(ま)ちて、即ち舌を以て、唇歯の内外を撹(か)き、津液(しんえき)を漱練(そうれん)す。
津液中にもし、鼻涕(はなじる)の混ずるありて、その鹹(しおからき)も、これを嫌わず、漱練やや久しければ、液中自然に甘美の味を生ず。
これはこれ、真気を含みたる験(しるし)なり、慎みて棄つべからず。

次に、津液、口中に満つれば、少しく頭を低くして嚥下(えんか)す。
気を以て送りて、丹田に入れる。
意を用うること猛精にして、津(しん)と気と合し、谷々然(こくこくぜん)として、声ありて、ただちに丹田に入る。
これを、第一順序とす。

次に、更に気を引きて、息を閉ずるより、津液を漱練(そうれん)して、嚥下(えんか)すまで、前法の如くす。
これを、第二順序とす。

次に、また更に気を閉じ、津を嚥下(えんか)すこと、また前法の如くす。
これを、第三順序とす。

かの如くして、気息を閉ずること通じて九度、津液を嚥(の)むこと通じて三度にして止む。

次に、頭を左右前後と搖(うごか)し、又左旋右旋すること、各々三回。

次に、左右の肩手をそびゆかし、及びなづること、凡(おおよ)そ五回。

次に、左右の手の指を練る。

次に、両手を以て、顔面耳項(うなじ)等を摩す。皆、極熱せしむ。

次に、両手の指にて、髪を梳(くしけず)る如くすること、凡(おおよ)そ百回。

次に、左右の手を以て、両乳及び、臍下丹田を始め、腎堂腰脊間(じんどうようせきかん)を熱摩し、極熱せしむ。
(徐々にこれを摩すべし。微汗出るも妨げなし。ただ、喘息するを嫌う)

次に、左右の足部をなづること、凡(おおよ)そ五回。

次に、左右の足の指を練る。

次に、左右の脚心(きゃくしん・いわゆる湧泉の穴)を熱摩す。

次に、立ちて、或は仰ぎ、或は俯(ふ)し、或は伸び、或は屈(かが)みて、身体を練り、気血をして全身に満たしむ。

次に、寝床上に安坐し、息の出入を数えること、凡(おおよ)そ二十五。
(息は鼻より引きて、口より出すべし)

右畢(おわ)りて、更に安臥(あんが)し、熟睡して明旦(みょうたん)に至る。

もし、安臥(あんが)する時間無き時は、直ちに起出(おきいづ)るも嫌うことなし。

委しくは口授を要す。
宮地東嶽 訣傳

 

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