(イシスの飾り留め)
"エレメンタリー"は、しばしば人に害を与え、犠牲者とする。
エレメンタリーには、ファンタズマ、カバール、インクブス、スクブス、ドラゴン、バシリスク、アヌピス、レオなどの様々なタイプがある。
(詳しくは、フランツ・ハルトマン著の「エレメンタル(The Elementals)」参照)。
インクブスは、性液を漏らす女によって生み出される。
スクブスは同様に、射精する男によって生み出される。
インクブスの性別は男性で、スクブスは女性である。
これらのエレメンタリーは、生みの親に対して、自分に生命を与えてくれた、その行為を繰り返させようとする。
そして、それを生んだ生命体を犠牲にして生きていく。
そのような時、肉体はエレメンタリーの寄生によって衰弱している。
このインクブスとスクブスは、阿魏(あぎ)を用いて消滅させる事が出来る。
阿魏(あぎ)を熱した炭の上に置き、その香によって雰囲気を洗浄する。
それでそのラルバを消す事が出来る。
また、靴の中に硫黄を入れて歩く事も、得策である。
硫黄から生じる蒸気が、それらの危険なラルヴァを消滅してくれる。
ファンタズマは夜にさまよい、性エネルギーを消耗する姦淫者の寝床に侵入する。
そして、漏れた精液をはらまして、そこからあらゆるタイプの無数のラルバが生じる。
硫黄とあぎは、それらすべてのラルヴァを根絶する。
ドラゴンと呼ばれるラルヴァは、売春婦の寝室によく侵入する。
それは精液から生じるが、硫黄とあぎによって消滅する。
"エレメンタリー"によって、ノーシスの学徒は誘惑の奈落に落ちていく。
それゆえに、すべての学徒は硫黄とあぎを使用するべきである。
黒魔術師は、それらのラルヴァをすべて駆使して、学徒を道から逸らせ、傷つけるのである。
【ラルヴァ】
生物学の用語で「幼虫」の意。
霊体組織からはみ出た、どこにも所属すべき場所が無い、存在の萌芽という意味になる。
例えば、罪人が処刑され地面に流された血、自慰や睡眠中にこぼされた精液などが、まがまがしい蒸気のように立ち上ってラルヴァになるという。
つまり呪われた魂や、無益に消費された生命の種子が、有機体の滅びた後まで執拗に存在し続けようとする時、その怨念・執念がラルヴァとなり、人々を悩ます結果となる。
【エレメンタリー】
メンタル・エネルギーや、消耗された性エネルギーにより、人工的に創造された生き物。神の意識はない。
一方、火の精霊やエーテルの精などのように、神の意識を持つ自然界の精霊を「エレメンタル」という。
【ファンタズマ(Phantasma)】
「幽霊」「亡霊」「幻」と訳される。
【インクブス(Incubus)】
睡眠中の婦女を犯すという男性夢魔。ラテン語のCubは「寝る」の意で、インクブスは「上に寝る者」、スクブスは「下に寝る者」の意。
パラケルススは、「想像力とは、星辰的身体から生ずるもので、肉の交わりにおいては実現されない行為(マスターベーションのこと)である。
この孤独な相手のいない愛は、ガス状精液を生み出しうる素質をもっている。
この心霊的精液から、女を圧迫するインクブスや、男に挑みかかるスクブスが生まれる」と記している。(パラケルスス著「不可視の病気について」)
【スクブス(Succbus)】
睡眠中の男性と情交するという、女の夢魔。
【バシリスク(Basilisc)】
北アフリカ産の小型の毒蛇。
@エジプトコブラ(クレオパトラが自殺に用いたという)。
Aアスプククサリヘビ(ヨーロッパ産に住む、クサリヘビ科の小さい毒蛇)。
【フランツ・ハルトマン】 Franz Hartmann 1838〜1912
ドイツ人医師、神智学者、秘教学者、錬金術師。
著書「バラ十字団の秘密象徴」「智恵の神殿の入り口にて」「バラ十字アデプト館への冒険」「魔術―白と黒」。
【あぎ(Asafoetida)】
阿魏。せり科の多年草。茎は太く、高さ1m、葉は大きく、形は人参に似ている。
葉から採れるゴム状樹脂を固めたものが咳止め、虫下しなどの薬用として利用されている。イラン・アフガニスタン地方原産。